ひきこもり科学館

つれづれなるままに、ひきこもり、硯にむかひて

東京一極集中の対策について(税制や特区など、多少の荒療治を含む)

 前回は、東京一極集中の問題点についてお話ししました。

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このままでは、東京もそれ以外の地方も、不幸な結果を招くことになりかねません。では、東京一極集中には、どのような対策を取ればいいのでしょうか?考えてみました。

 

(荒療治編)

 まずは、荒療治編です。少々手荒いですが、効果は高いかと思います。その分、弊害も大きいかもしれませんが。ただ、こういうのは「思い切り」が大事ですので。まずは、大胆な方策を考えよう、ということです。それでは、順にみていきましょう。

 

① 税制

 まずは、税制に手を付けるのはどうでしょうか。早い話、「東京にいると、めちゃめちゃ高くなる」ような税制にすればいいのです。例えば、かつてあった地価税のように、地価に応じて課税するとか。あるいは、特定地域での消費や生産活動に高く課税するとか。とにかく、東京にいると損をするような仕組みにする、ということです。そうすれば、東京からはどんどん人が逃げていくでしょう(金持ち以外は)。

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② 立地規制、特区

 これも手荒いですが、立地規制や特区に取り組むのも1つです。やり方によっては、1番手っ取り早いかもしれません。まずは、立地規制について。特定地域における大規模開発を規制するのはどうでしょうか。例えば、若者を吸い寄せる学校・教育機関や、労働者を吸い寄せる大工場あたりが効果的ですかね。次は、特区制度について。特定地域における特定産業の振興を促進するのはどうでしょうか。特定地域に予算を集中的に配分する、特定地域で大幅な規制緩和を行う、などの手段が考えられます。例えば、北海道では農業分野の規制を大きく緩和します、今までできなかった企業的経営もできるようにします、というように。あるいは、滋賀県では環境関連産業の振興を促進します、新エネルギーや環境汚染防止など、環境関連分野の企業や大学、研究機関にはたっぷり補助金を出します、というように。北海道にしろ、滋賀県にしろ、特定の地域にドカッと資本を投入する。そうやって、地場産業を育てていけばいいのです。

 

③ 首都(機能)移転

 もう、いっそのこと、首都か首都機能を移転させるのはどうでしょうか。要は、首都に人口が集中するなら、首都そのものを動かしてしまおう、という話です。まぁ、昔からこういう話はありますね。ポッと浮かんでは消えて、の繰り返しですが…。しかし、そろそろ本格的に取り組むタイミングが来ているのではないでしょうか?最近では、文化庁の京都移転の話がありましたね。いい流れだと思います。文化の中心地は京都で、という感じで。だったら、商業の中心地は大阪で、工業の中心地は名古屋で、という感じで分散させるといいかもしれません。政治の中心地は…、そのまま東京でいいかな。そういえば、かつて日本にも、遷都を繰り返していた時代がありましたよね。何なら、数年~数十年スパンで首都を移転させるのはどうでしょうか。例えば、首都を30年ごとに移転させて、国土開発を進めるとか。そうすれば、30年ごとに新しい都市ができるという…。

 

④ 道州制

 ついでに、道州制について議論してみるのも1つです。道州制というのは、行政区分を広域化することによって、行政の効率化や広域的課題への対応を図ろう、というものです。これはまぁ、地方に権限が移らないと意味がないと思いますが…。

 

(ゆる療治編)

 次は、ゆる療治編です。先ほどの荒療治編と比べて、弊害が少なく、ゆるやかな手段になっているかと思います。そういう意味では、現実的な手段であるかもしれません。その分、実効性や即効性にも差があるかとは思いますが…。まぁ、こういうのは、荒い方もゆるい方も、上手く使い分けることが大切ではないでしょうか。それでは、順にみていきましょう。

 

① 立地誘導(立地規制ではない)

 東京一極集中が進んでいるのは、東京に多くの企業や大学が集まっているからです。ということは、東京にある企業や大学を地方に移転させることができれば、東京一極集中の流れに歯止めをかけることができるはずです。荒療治編では、その手段として立地規制を取り上げました。とはいえ、立地規制は強引な手段ですから、もう少しソフトに、立地誘導的な手段も考えておきましょう。例えば、地方に拠点を移転させた企業や大学には補助金を出すとか。あるいは、一定期間税金を減免するとか。立地を規制するのではなく、誘導するのです。要は、エサを撒いてやる訳ですね。この方が、ソフトといえばソフトです。

 

② 地方居住マインドの醸成、地方職就業マインドの醸成

1) 地方居住マインドの醸成

 若者は多くは、都会にあこがれるものです。何だかんだ、1度は東京に出てみたい、と思うものです。それ自体は構わないのですが、何でも、都会の方が住みやすいとは限りません。実際、都会に出て、地元やいなかのよさが分かった、という人は多くいます。地方の方が、無駄な人混みがないし、家賃は安いし、食べ物は美味しいし………。決して、悪いもんじゃないです。大都市には大都市の、中小都市には中小都市の、農山村には農山村のよさがあります。こうしたことを、もっと伝えていくべきではないでしょうか。例えば、学校の地理教育に何らかの形で組み込んでみるとか(もっと、地域の環境について考えられる内容にするとか)。もちろん、その上で「都会の方がいい!」という人は、それはそれで構いませんが。きっと、「地方の方がいい!」という人も、たくさんいるはずです。

 

2) 地方職就業マインドの醸成

 地方には仕事がない、というのは半分正解で半分間違いです。確かに、地方には「電通マン」のような、大卒向けホワイトカラー職は少ないです。しかし、ほかの仕事ならたくさんあります。まずは、農業(+林業・漁業)。こちらは、いなかほど多くあります。しかも、絶賛人手不足・跡継ぎ不足中で、「誰か、耕してくれ~~~」「若い人ぉ~、来ておくれよ~~ぅ」という田畑は腐るほどあります。もちろん、楽な仕事ではありませんが、人の相手よりも、草木の相手の方が好きかも…?という方はぜひご検討ください。会社の人間関係なんか糞くらえだ!という方には、意外と向いているかもしれません。収入だって、自ら経営できれば青天井です。ここが、サラリーマンとは違いますね。次に、工業。工場は、割と地方にあることが多いです。工場勤務は、給与面では大卒ホワイトカラー職に劣るかもしれません。しかし、下手なホワイトカラー職より残業が少なく、人間関係も楽なところが多いです。仕事はほどほどにしたい、ワークライフバランス重視の方には、ちょうどいいのではないでしょうか。また、下手な事務・営業職よりは、具体的な技術、スキルが身に付きやすいです。要は「手に職が就く」ということです。さらには、公務。どうしても、ホワイトカラー職がいい!という人には公務員があります。何せ、お役所はどんなところにも、確実にありますからね。都会の、下手なブラック企業で消耗するくらいなら、ぜひこちらに目を向けてみてはいかがでしょうか。

 

 このように、地方にはちゃんと仕事があります。ただ、問題なのは、そのことに目が向かないということです。その背景には、変に強まってしまった大企業志向、ホワイトカラー志向があります。何でしょうね。今の世のなかには、何となく大企業、何となくホワイトカラーがいい、というイメージが浸透しています。それは、(中小企業よりも)高収入で知名度もある大企業、(農家や工場よりも)きれいで知的な感じがするホワイトカラー職の方がカッコいい、様になる、モテる、みたいな感覚です。ところが、このイメージは、地方とはすこぶる相性が悪いのです。何せ、地方にあるのは大企業、ホワイトカラーではなく、中小企業、農家、工場ですから。そのせいで、地方にある仕事は見向きもされません。(仕事は)あってもない同然に扱われています。これが問題なのです。皆さん、そんなに大企業がいいですか?そんなにスーツを着て、仕事したいですか?本当は、そうでもない人も、結構多いと思うのですが。別に、大卒だからって、大企業の総合職にならなきゃいけないこともありませんよ。大卒だって、農家をやったり、工場で働いたりしてもいいのですよ。その方が幸せになれる、という人も決して少なくないと思います(それぞれ、適性がありますから)。

 

 これからは、こうした地方にある仕事にも、もっと目を向けさせる必要があります。例えば、農業であれば、農業に特化した求人情報サイトをつくるとか。そこに、後継者募集情報を載せるとか。工業であれば、時短勤務など、女性でも働きやすい環境をつくるとか。あるいは、もっと「手に職が就く」ところをアピールするとか。なお、この手のものは、空き家紹介や家賃補助など、移住・定住支援策とセットで取り組むとより効果的でしょう。このようにして、もっと多くの人に、地方で仕事をしたい!と思ってもらうのです。そうすれば、実際に地方に住む人も、少しは増えていくのではないでしょうか。

 

③ 地場産業の育成

 いつの時代も、仕事のあるところに人は集まります。仕事がなければ、人は集まりません。そのため、どの地域であっても、地場産業の育成は大切だといえます(荒療治編では、その手段として特区制度を取り上げましたね)。例えば、農業。もっと企業的経営を進めて、収益性を上げましょう。あるいは、もっと6次産業化(*)を進めて、付加価値を上げましょう。次に、IT産業。これは本来、場所を選ばない仕事ですから、もっと伸ばしていきましょう。これは、リモートワークの促進とセットで取り組めば、より効果が上がると思います。さらには、観光業。日本人だけでなく、最近増えてきた外国人も取り込みましょう。東京や、ほかの地域にない魅力は何でしょうか。

 

*6次産業化:農林水産物を生産(第1次産業)するだけでなく、加工(第2次産業)し、流通・販売(第3次産業)まで手がけること。

 

④ 働き方改革(リモートワーク、フリーランス)

 よく、いなかには仕事がないと言われます(特に、ホワイトカラー職は)。しかし、それは会社に通う、という前提条件があるからです。そもそも会社に集まる必要がなければ、そんなことは問題になりません。よって、毎日会社に集まらなくても仕事ができるようになれば、いなかでも十分に生計を立てられるようになります。「働き方改革」を始めましょう。ズバリ、リモートワークやフリーランスを普及させるのです。これからは、「その仕事、会社じゃないとできませんか?」と、絶えず問いかけることが大切です。そうやってみると、「進捗報告は、メールでよくない?」「実は、週に1回、集まれば十分だよね」なんて…、ことになるかもしれません。そうやって、少しずつ、場所にこだわらない企業文化をつくっていくのです。また、独立・開業も奨励しましょう。そもそも会社に勤めなければ、働き方の自由度は大きく上がるのですから(もちろん、無理な追い出しはいけませんが)。

 

 以上、東京一極集中の対策について、あれこれ考えてきました。ただ、実際にやろうと思うと、なかなか難しいことも多いですね。これはもう、本気にならないと無理だと思います。ときには、(ゆる療治だけでなく)荒療治も必要になるのではないでしょうか。もはや、そういう時期に来ていると思います。それでは、今回はこのへんで。

 

 (参考文献)