ひきこもり科学館

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ベーシックインカム導入で「ニート」は増えるのか? →そんなに増えませんよ

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近年、「ベーシックインカム」という政策が盛んに議論されています。ベーシックインカムとは、(すごく、ざっくり説明すると)就労や資産の有無に関わらず、全ての個人に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付する政策のことです。しかし、ベーシックインカムは未だに慎重論が根強いです。その理由の1つが「労働意欲がなくなる」という指摘です。要するに、「働かなくても食っていけるのだから、わざわざ働かない」という人が増えるという指摘です。もっと踏み込んで言えば、働きもしない「ニート」みたいな奴ばかりになってしまう、という批判です。しかし、本当にそのようなことになるのでしょうか…?どうも、短絡的な感情論が先行しているようにみえます。もう少し、深く考えてみましょう。

 

◯ 働かざる者は増えるのか

先に結論から言うと、ベーシックインカムが導入されても、働かざる者はそんなに増えないと考えられます。その理由は、以下の6点です。

 

1) そもそも、ベーシックインカム支給額で事足りる人は少ない

ベーシックインカムで支給される金額は、おおよそ生活に最低限必要な水準に留まります(*)。そのため、ベーシックインカムのみで生活しようとすると、間違いなく「カツカツ」になります。まぁ、一生ひとり身で細々と生きていくのなら、不可能ではないでしょう。ただ、結婚したり子どもを育てたり…となると、厳しいのではないでしょうか。何かカネのかかる趣味でもあると、もっと厳しいのではないでしょうか。例えば…、クルマとか、時計とか、ゴルフとか。そう考えると、ベーシックインカムのみで満足できる人はそれほど多くありません。少なくとも、世間の多数派を形成するとは思えません。

 

*AI(人工知能)技術の進歩によって、労働生産性が飛躍的に高まれば話は別です。

 

2) 「仕事大好き人間」は少なくない

世のなかには、「仕事大好き人間」という人たちが少なからずいます。「仕事大好き人間」とは、仕事をすること自体が大好きだ!生きがいだ!というような、幸せな人たちのことをいいます。この人たちは仕事そのものが好きですので、ベーシックインカムがあろうとなかろうと関係ありません。ただただ、仕事を続けるのみです。

 

3) 「お金稼ぎ大好き人間」も少なくない

世のなかには、「仕事大好き人間」と同様に「お金稼ぎ大好き人間」も沢山います。「お金稼ぎ大好き人間」とは、お金を稼ぐこと自体が大好きな人たちのことです(そのまんまだな)。この人たちはいくらでもお金が必要ですので、わずかなベーシックインカムの支給額ではとても満足できません。もしベーシックインカムが導入されても、今まで通り、残業をいとわずバリバリと働き続けることでしょう。

 

4) むしろ、挑戦的な仕事に取り組む人が増える(起業など)

ベーシックインカムが導入されれば、失敗しても路頭に迷うことがなくなるため、冒険ができるようになります。

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そうなると、「起業しよう!」「新しいビジネスを興そう!」といった、より挑戦的な仕事に取り組む人が増えていきます。このような人たちは、自ら仕事を創りだすようなタイプですので、仕事をしない訳がありません(仕事の性質が、一般的なサラリーマンとは異なるかもしれませんが)。

 

5) かえって、労働条件や労働環境は改善される

ベーシックインカムが導入されれば、(辞めても何とか生活できるので)仕事を辞めやすくなります。そうなると、近年問題となっている「ブラック企業」からは、どんどん人が逃げていくでしょう。すると、どうなるでしょう…?使用者は、労働条件や労働環境を改善せざるを得なくなります(しなければ潰れます)。改善されれば、当然労働者にとってはいくらか働きやすくなります。働きやすくなれば、働きたくなる人も増えていきます。ベーシックインカムは、働く人にとってもメリットがあるのです。

 

6) 「労働意欲がなくなる」批判が多いのは、労働に意義を見出している人が多いから

ベーシックインカムに関する議論では、必ずと言っていいほど「労働意欲がなくなる」という批判がなされます。そして、このような言説は比較的多くの人に支持されています。しかし、この手の批判をする人たちは、仮にベーシックインカムが導入されたとして、本当に働かなくなるのでしょうか…?まず、この手の批判をしている人たちは、ほぼ普段から働いている人だとみなしていいでしょう。そして、そのなかで(純粋に)お金のために仕方なく働いているという人は、ベーシックインカムに反対するとは思えません。そうなると、彼らは(程度の差こそあれ)お金ではなく、労働自体に何らかの意義を見出していると考えられます。労働自体に、何らかの目的、やりがい、楽しみなどがあるのだろうと考えられます。したがって、仮にベーシックインカムがあっても、労働そのものへの意義は喪失しない、ということになります。そう考えると、彼らはたとえベーシックインカムが導入されたとしても、すぐに働かなくなるとは考えにくいです。そもそも、このような言説が支持されるのは、労働そのものに何らかの意義を見出している人が多いことの裏返しではないでしょうか。

 

このように、たとえベーシックインカムが導入されても、皆が心配するほど働かざる者は増えない、と考えられます。せいぜい「ちょっと増えるかな?」くらいで、騒ぎ立てるほどにはならないでしょう。

 

◯ 働き方は変わるが…

先述の通り、ベーシックインカムが導入されても、あまり働かざる者は増えません。しかし、働き方をいくらか変える人は増えると思います。例えば、(パートやアルバイトでも食っていけるので)正社員やフルタイムにこだわる人は減っていくでしょう。今までのように「仕事に全力投球!」とはいかなくなるかもしれません。とはいえ、その変化は決して悪いものではないと思います。むしろ、今までの「働きすぎ」状態を見直す、よい変化だと考えられます。ベーシックインカムは、働き方を改善する起爆剤として、前向きに考えるべきではないでしょうか。

 

ではでは、今回はこのへんで。

 

 (参考文献)