ひきこもり科学館

つれづれなるままに、ひきこもり、硯にむかひて

「就活を通じて成長しました!」(美談) ←いやいや、おかしいだろ!変にごまかすなよ!

最近、就活を美化する風潮が強すぎないでしょうか。例えば、学生から「就活を通じて成長しました!」という声をよく聞きますが、それは本当でしょうか。どうにも、おかしな感じがします…。そこで今回は、この手の「就活を通じて成長しました!」言説について、一度立ち止まって考えてみることにしました。

① 「成長」って、具体的に何が成長したの?

先ほどの「就活を通じて成長しました!」言説ですが、ここでいう「成長」とは、一体何のことでしょうか。例えば「知らない人とも、臆せず話ができるようになった」ことでしょうか。それとも「自ら、行動を起こせるようになった」ことでしょうか。まぁ、このあたりは人それぞれですが、ここで具体的な答えが浮かばない人は「気のせい」である可能性が高いです。

 

② 「成長」って、どのくらい成長したの?

ひとことで「成長」といっても、そのレベルはさまざまです。しかし、就活を通じて得られた成長は、その苦労のわりに大したことない場合が多いです。“大したことない”というのは、どうせ入社したら、すぐにでも身に付くレベルだということです。えー、そうですね…。大体、入社して2週間で追いつくようなことが大半ではないでしょうか(例えば、しょーもないビジネスマナーとか)。だから、就活で「わたし、成長しました!」なんて言っても、ほとんど意味はないかと思います。

 

③ 単に、就活を美化したいだけなのでは?

では、なぜ就活と「成長」は(半ば無理やりにでも)結び付けられるのでしょうか。それは、就活を美化した方が何かと都合がよいからです。

 

1) 就活への意欲を高めるため

「成長」というのは便利な言葉で、意味もなく人の「やる気」を高めてくれます。そのため、「成長」は(人に就活をやってもらうことで利益が出る)人材サービス業にとって、就活の「やる気」を出してもらう都合のよい言葉なのです。そう考えれば、リクルートあたりが「就活を通じて成長しました!」という、キラキラした就活体験談を持ち出すのも、何となーくは理解できるでしょう。つまり、就活を美しくみせて、1人でも多くの人に「やる気」を出してもらおう、ということです。ここで言う「成長」なんて、ビジネス上の売り文句に過ぎないのです。

 

2) 就活の苦しさを紛らわすため

学生にとって、就活はストレスフルです。何せ、たくさん移動しないといけないし、オッサンと話さないといけないし、理由も分からず落とされるし…。そのため、就活を続けるには、どうにかして気を紛らわす必要があります。そこで用いられるのが「成長」という概念です。学生たちは「自己PRがはっきりと言えた」「グループディスカッションで発言できた」など、ちょっとしたことでも「あぁ、自分も成長したなぁ!」と言って、就活の苦しさを紛らわすのです。たとえ、実際には大して成長していなくても、成長したと思わないとやってられないのです。結局、就活を続けるために、自分をごまかしていることが多いのではないでしょうか。

 

3) 就活の問題点を隠すため

就活体験談では「40社受けてようやく内定が出ました!」といった話が、なぜか美談として扱われます。こうしたエピソードにはよく、内定が出たのは「成長したからだ」「頑張ったからだ」といった理由が付いていますが、それで「よかったね」と片付けてしまってよいのでしょうか。よく考えてください。そもそも、40社受けないと内定が得られない、という状況に何か問題はないのでしょうか。ない訳がありません。もし、そんな状況が「普通」なら、労働市場のシステムに大きな欠陥があると考えるべきです。だって、そうでしょう!明らかに非効率ですし、消耗が激しいですし…。ところが、就活体験談ではこういった問題が隠れてしまいます。「成長」といった、耳触りのよい言葉で隠れてしまうのです。こういった言葉は、ときに不都合な真実を隠すためにも使われるのです。

 

④ 就活の目的は「成長」ではない

そもそも当たり前のことですが、就活の目的は「成長」ではありません。希望する職に就くことです。仮に何か成長したとしても、内定を得られなければ意味がありません。「成長」はあくまで就活の副産物です。したがって、「成長」のために就活をするのは間違っています。目的と手段をはき違えないでください。

 

(さいごに)

どうでしょうか。残念ながら、「就活を通じて成長しました!」という言説は、そのまま受け取るには少々無理があるかと思います。ときに、就活を美化するための都合のよい言葉にもなりかねません。だから、皆さんには周囲に流されず、自分でよく考えて就活に臨んでほしいのです。それでは、今回はこのへんで。

 

(参考文献)