序章 ひょっとして、採用面接って無駄じゃないのか?
企業にとって、採用が重大な関心事であることは、いうまでもありません。どの企業も、いかにして優秀な人材を確保するのか、には常に頭を悩ませています。
いま現在、どの企業も(人やお金や時間など)様々なコストをかけて、懸命に採用活動を行っています。何としてでも、自社で活躍してくれそうな、優秀な人材をゲットしたい!そのためなら、多少のコストはいとわない…!そう考えています。
採用活動において、企業が何度も繰り返し面接をするのは、このためなのです。何度も何度も、繰り返し面接をすることによって、優秀かどうか、自社で活躍できるかどうかを、少しでも見極めたいのです。
しかーし!何度も面接をしているのに、起こってしまうのです。
何かおかしい
ということが。
期待の新人が活躍してくれない
ということが。
例えば、まるで意欲が見えなかったり、精神的に参ってしまったり、なかなか成果が出なかったり…。どうにも、思った通りには活躍してくれないのです。おかしい、あんなに期待していたのに。面接のときは、ものすごくいい!と思ったのに…。いざ入社すると、どうしてこうなった?ということも少なくないのです。その一方で、面接での感触はイマイチだった人が、なぜか、すっごく活躍していたりもするのです。…そうなると、もはや、何のために面接をしているのか分かりませんね。ところが、こうした事態は決して珍しいことではないのです。多くの企業で、割と似たような状況になっています。
すると、ここで1つ、大きな疑問が湧いてきます。それは、
「ひょっとして、採用面接って無駄じゃないのか?」
という疑問です。つまり、
「採用面接では、何も分からないんじゃないか?」
という疑問です。
……いやいや、そんなことはないはずだ!という人もいるかもしれません。しかし、採用面接には多くのコストをかけている以上、この疑問には徹底的に取り組むべきではないでしょうか?少し立ち止まって、考えるべきではないでしょうか?いま一度、採用面接の効果を検証しなければなりません。
2章 今すぐ採用面接の効果を検証せよ!
もし「採用面接って無駄じゃないのか?」と考えた場合、実際に採用面接が無駄なのか・無駄じゃないのか、を検証しなければなりません。では、具体的にどのように検証していけばいいのでしょうか?考えてみましょう。
(1) 採用面接での評価と、入社後のパフォーマンスを比較する
採用面接の効果を検証するには、採用面接での評価と、入社後のパフォーマンスとを比較する必要があります。採用面接時の評価資料を片っ端から集めてください。そして、面接時の評価と、入社後のパフォーマンスとを徹底的に比較するのです。
面接時、◯◯さんはどのような人物として評価しましたか?それは、入社後も変わりませんでしたか?―また、面接時、◯◯さんはどのように活躍してくれると期待しましたか?そして、入社後も期待通りに活躍してくれましたか?――それで、両者に相関性が認められた場合は、特に問題ありません。今まで通り、面接を続けていただいて結構です。しかし、両者に相関性が認められなかった場合は、問題アリです。この場合は、採用面接の意味がない(あるいは、意味が著しく小さい)ということになります。残酷ですが、そういうことになります。
そもそも、商売でも勉強でも効果を検証するって、当たり前のことなのですがねー。何で、採用になると、これがなおざりになるのですかねー。本当に謎ですよ。
(2) 対照実験をしてみる ~面接の有無で比較する
採用面接の効果をより明確にしたいのならば、対照実験をしてみることです。つまり、採用選考を<面接によって採用する方式>と<面接なしで採用する方式>の2つの方式で実施するのです。そして、この2つの方式で、入社後のパフォーマンスにどのような差が出てくるのか、を検証するのです。
具体的には、次のような方式で実施するといいでしょう。これで、採用面接に意味があるのか・ないのか、がはっきり分かるはずです。
・A方式:従前の面接によって採用する方式
ただし、面接以外の選考(筆記試験、性格検査等)を実施しない。
・B方式:面接なしで採用する方式
不作為とするために、応募先着順あるいは抽選で内定者を決定する。
さぁ、A方式とB方式、どういう差が出てくるでしょうかね~。もし、ここまでして「どっちも、そんなに変わらん」というのなら、もはや面接に意味はないでしょう。何せ、対照実験ですから。言い訳はできないはずです。逆に、何かしらの差が表れた場合、そこには何かしらの意味があるということです。今、意味のあることは何か、考えてみましょう。面接でみるべきポイントが、はっきりしてくるかもしれません。なお、実験後のプロセスを整理すると、次のような感じになります。
対照実験の結果、A方式とB方式で
- 差が出た項目 → 何か意味がある(面接でみるべきポイントかも)
- 差が出なかった項目 → 意味がない!
*実験結果を、面接の方法や項目の改善に役立てること。
*ただし、もし差が出なかった項目ばかりの場合、面接自体に意味がないと判断。
3章 もし採用面接が無駄だと分かったら…
では、もし採用面接が無駄だと分かってしまった場合、どうすればいいのでしょうか?今後の方針について、考えていきましょう。
(1) まずは、採用面接をやめること
採用面接が無駄だと分かってしまった場合、どうすればいいのでしょうか?―とりあえず、当たり前のことをいいましょう。
面接をやめてください、無駄ですから。
もう1度いいます。
面接をやめてください、無駄ですから。
とはいえ、いきなりやめるのは難しい…、という場合もあるかと思います(あなたが、ワンマン社長でもない限り)。その場合、まずは面接の回数を減らしてください。1回でもいいから、減らしてください。少なくとも、3回も4回もやる必要はありません。とにかく、ちょっとでも面接をなくしていく方向にもっていきましょう。
(2) 面接以外の手段を検討しよう ~相関性チェック、インターンシップ
採用面接は無駄だ!だとしても、採用自体はやらねばなりません。そこで考えなければならないのが、面接以外の採用手段です。とはいえ、今まで面接に頼りきりだった分、「何をどうしたらいいのか、分からない」という方も多いのではないでしょうか?―でも、大丈夫です。これから、じっくり考えていきますので…。
まずは、面接以外で入社後のパフォーマンスと相関性のあるものがないか、調べてみましょう。学歴、職歴、筆記試験、性格検査etc…、何でも構いません。何なら、履歴書の字の上手さでも構いません(あまり、相関はないかもしれませんが)。とにかく、入社後の生産性と相関のあるものを洗い出すのです。それで「相関あり」となったものは、ズバリ採用において(面接よりも)重視すべき要素となります。仮に、「何だかんだ言って、学歴って相関あるよなー」となれば、学歴をみて採用すればいいのです(これは差別ではありません)。仮に、「性格検査の◯◯の項目に、相関があるようだ」となれば、性格検査のその項目をみて採用すればいいのです。このように、あくまで入社後のパフォーマンスと相関するものをチェックするのが大事なのです。
しかし、検証の結果、入社後のパフォーマンスと相関する要素がない、あるいは少ない、というケースも起こり得るでしょう(実際、そんなもんだったりして?)。この場合は、「仕事なんて、実際にやらせてみないと分かんないよね」というのが結論となります。(今までかけてきた)採用コストそのものがもったいない、というのが結論となります。では、この場合の「正解」とは何でしょうか?―この場合は、極力コストをかけずに採用することが「正解」となります。したがって、(努力を放棄するようですが)応募先着順あるいは抽選で採用するのが「正解」となります。「えー、何だかなぁ…」という感じもしますが。無駄なことにコストをかけない、というのも大事なのです。
とはいえ、「そんな、いい加減な採用はできない」とか、「できる限り、ミスマッチは避けたい」とか、いろいろ文句を垂れるヤツもいるでしょう。その場合、方法論は1つしかありません。そうです、インターンシップです。近年、流行りのインターンシップです(あるいは、期間を区切ったアルバイトなんかでもいいです)。すでに「仕事なんて、実際にやらせてみないと分かんないよね」という結論が出ている以上、実際にやらせてみるしか方法はない、ということです。これでは、どうしてもコストが高くついてしまいますが。致し方ないことです。それだけ、優秀な人材を確保するにはコストがかかる、ということです。たかだか20~30分の面接で何とかしよう、という虫のいい思考は今すぐ捨ててください。実際、近年インターンシップが急速に普及したのって、そういう反省もあったからじゃないかなぁ?違いますかねぇ…?
以上、長々と書いてきました。あなたの会社でも、一度、採用面接の効果を検証してみてはいかがでしょうか?それでは、今回はこのへんで。