ひきこもり科学館

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地理の勉強って何の役に立つの?と訊かれたら ~地理を学ぶ意義について考える

前回の記事では、「歴史の勉強って何の役に立つの?」という疑問に答えてきました。www.neetland.com


すると、ここでもう1つ、新たな疑問が湧いてきますね。それは、「地理の勉強って何の役に立つの?」という疑問です。何せ、歴史と地理はセットですからね。よく、「歴史は時間の学問、地理は空間の学問」というように、両方やってこそ、時空間を一体的に理解できるというものです。では、地理を学ぶ意義とは何でしょうか?自分のお子さんに説明できますか?―――説明できないと、マズいですよねぇ…。という訳で、今回は「地理の勉強って、何の役に立つの?」という素朴な疑問に、正面から向き合ってみることにしました。そして、あれこれ考えた末、大きく分けて5つの解答例を導くことができました。それでは、順にみていきましょう!

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1. 世界の成り立ちを理解する

そもそも地理は、私たちの生きる世界(地域や空間、環境)の有り様について学ぶ科目です。したがって、地理を学ぶことは、私たちの生きる世界の成り立ちを理解することである、といえます。例えば、あなたの地元はどのような地域なのか、どのような魅力があるのか、その理由には何があるのか、といったことを理解できるようになります。

(1) 現象の理由や背景を、論理的に説明できるようになる(暗記ではなく)

(勘違いされがちですが)そもそも地理は暗記科目ではありません。考える科目です。決して、地域の名産品の名前を暗記する科目などではありません(もちろん、最低限暗記した方がいいこともありますが)。どちらかというと、地域でなぜその名産品が生まれたのか、その名産品の地域ならではの特徴は何なのか、を考える科目です。例えば、「扇状地の地形が桃の生産に適していた」とか「カステラは舶来文化の影響を受けている」とか、そういうことです。同様に、単に山や川の名前を覚えるのではなく、どうしてその地形ができたのか、その地形は地域での生活や産業にどのような影響を与えたのか、そういったところまで踏み込んで考えるのが地理なのです。地理的な現象には、ちゃんとそれなりの理由や背景があります。したがって、地理を(ちゃんと)学ぶと、現象の理由や背景を論理的に説明できるようになるのです。

(2) 世界の多様性、普遍性を理解する

先ほどは、地理を学ぶことは世界の成り立ちを理解することだと述べました。では、世界の成り立ちを理解すると何が分かるかというと、世界の多様性や普遍性が分かるようになります。例えば…、そうですね。世界を旅すれば、少数民族の暮らしに触れて、生き方や価値観の多様さを知ることもあるでしょうし、一方で、どこでも同じようなショッピングモールがあるのをみて、グローバリゼーションの波を感じることもあるでしょう。このように、世界の有り様はさまざまですが、どこか似たようなところもあったりします。そういったことを理解するのが、地理というものなのです。ついでに、世界の普遍性に関して。地理には、ある程度普遍的な法則性があるのですが、分かりますかね?―例えば、「気温は、緯度と標高の2つで決まる(*)」とか、「交通が不便な地域ほど、独自の文化や方言が残りやすい」とか、そういうことです。そういうことが分かるようになると、地理的なセンスが磨かれてきたといえるでしょう。

*ほかに、地形や気流、海流などの要素も影響します。

a) 日本の常識・価値観を打ち破る

地理、とりわけ世界の地理を学ぶことは、日本の常識・価値観を打ち破ることにつながります。実際、留学や海外居住の経験がある方は、よく分かるかと思いますが。日本の常識は世界の非常識、世界の常識は日本の非常識、ということがよくあります。実際、海外に行って「人生が変わった」「価値観が変わった」という人、よくいますよね?そういうことですよ。世界のことを知れば、 人生の視野が広く選択肢が多くなります。例えば、「ある程度、自給自足もできるなぁ~」とか「こういう、家族のあり方もあるんだなぁ~」とか。狭い日本の常識や価値観なんて、どうでもよくなります。

b) 他の国・地域の人と仲よくなる

世界の地理を学ぶことは、海外の人々と友好を深めることにも役立ちます。だって、少しは事前知識があった方が話が弾みますし、相手の国について知りたい!という姿勢が好感につながりますし…。まぁ、当然ですよね。別に、「地理マニア」になる必要なんか全くないですが。海外のことに興味を持ち、あるがままを受け入れる、そういう姿勢が大切だと思います。

2. 旅行がもっと楽しくなる

地理的な知識があると、旅行がもっと楽しくなります。なぜかって…?旅行は、地域の特色や魅力を感じること、楽しむことだからです。要するに、地理を感じること、楽しむことだからです。ということは…、地理的な知識と結びつきますよね?地理的な知識があると、(地域の特色や魅力を)より深く感じること、楽しむことができますよね?そういうことですよ。例えば、彦根に行ったとき、お城の天守だけでなく、城下の町割りを楽しめるようになるとか。伊吹山に行ったとき、気候や植生の特徴が分かるようになるとか…。地理的な知識があると、そういう「あっ!」という気付きが増える訳ですね。で、そういう気付きってどうですか?―嬉しいですよね、嬉しいはずです。だから、知識はあって損はないです。知識があれば、例えば「ブラタモリ」のタモリさんのように、地域をより深く感じる・楽しむことができるようになります。

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何も、旅行に限ったことではありません。私のような地理屋さんになると、ご近所をブラつくだけで、それなりに楽しめるようになります。例えば「この水路、何か変なところで枝分かれしてるな?」とか「このマンホールのデザイン、シャレてるなぁ~」とか。ちょっとそのへんをブラブラするだけで、それなりに発見があったりします。

↓ 関連記事中、「6. 文学は多種多様、空間文学(地理学)の楽しみ方」参照

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3. 地域をよりよくする

実は、地理って、結構実用的な科目だと思っています。なぜかというと、地理(的な状況)を知っていると、地域をよりよくすることができるからです。具体的には、地域の政策立案やまちづくりに役立てることができるからです。

(1) 地域の現状(課題や問題点、ポテンシャルなど)を把握する

地理を学ぶことは、地域の現状を分析することでもあります。例えば、地域の人口分布はどうなっているのか?人口変動の著しい地域はどこなのか?そういった、地域の現状を把握することにつながります。ときには、地域の課題や問題点、ポテンシャルが明らかになることもあります。例えば、「この地域は、近く限界集落になるだろう」とか「あの地域は、海外からの移住者が増えている」とか。そういった、興味深い事実が浮き彫りになることもあります。もっと、分かりやすい例を挙げましょう。ハザードマップなんか、そうですよね。ハザードマップというのは、地震や洪水などの災害時、被害が想定される地域や避難場所を示した地図のことです。大体、どこの自治体も出していますよね?あれを見れば、自分の住む場所にどんなリスクがあるのか、どこにどうやって避難すればいいのか、分かるという訳です(お部屋探しのとき、見ておいた方がいいですよ)。ほかにも、防犯マップとか、いろいろありますよね。そうやって、地域の現状を把握することができるという訳です。

(2) 地域環境を向上・改善する、地域問題を解決する

先ほどは、地理を学ぶことは、地域の現状を把握することだと述べました。では、地域の現状を把握することは、何の役に立てることができるでしょうか?―ズバリ、地域の環境を向上することや、地域の問題を解決することに役立てることができます。例えば…、都市計画を立案したり、再開発を実施したりして、住みよいまちをつくることができます。あるいは、犯罪の発生データから、地域の取り締まり体制を強化したり、交通事故の発生データから、道路や標識を改修したりすることができます。このように、地理は地域環境の向上や、地域問題の解決に大いに役立てることができるのです。

4. ビジネスに活用する

地図や地域統計、GPSなどを用いた地理的な分析は、ビジネスにも活用することができます。例えば、地域の人口や道路の交通量、競合店の位置をもとに、売上予測を行ったり、立地戦略(出店戦略)を練ったりするなど、「エリアマーケティング」に活かすことができます。例えば、学習塾の立地・出店戦略について、こんな見方ができますよね(実際、立地って大事ですよ。後でそうそう動かせませんし…)。

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あるいは、交通網や車両のデータをもとに、運輸・流通システムを効率化することができます。このように、地理的な分析はビジネスにも大いに役立てることができるのです。

5. 統計・データ分析能力を身に付ける

地理を学ぶなかでは、各種統計やデータに触れる機会が多くあります。例えば、国勢調査の小地域集計をもとに、データマップを作成したり、各地域の状況を考察したり…。そういう機会が多くあります。そのため、地理を学べば、統計・データの分析能力を身に付けることができるのです。感覚や勘ではなく、客観的な情報から物事を判断できるようになるのです。これって、割と重要な能力だとは思いませんか?

◯ おわりに

以上、あれこれ考えてみました。ただし、これはあくまで私のしょぼい頭で考えた「思いつき」に過ぎませんので、他にもっといい答えがあるかもしれません。ていうか、あるはずです。ですので、ここから先は、自分でよく考えてみてください。あくまで、自分なりの答えを導き出すのが大切だと思います。ではでは、今回はこのへんで…。


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(参考文献)