ひきこもり科学館

つれづれなるままに、ひきこもり、硯にむかひて

「大卒者の3割が3年以内に離職する」のは、ごく自然な現象です。それをなぜ、問題視するのですか?

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 事業は人なり。ビジネスをやっていく上で、優秀な人材を確保することは、これ以上ないくらいに重要なことです。だから今、企業は採用活動に躍起になって取り組んでいます。

 しかし、そのなかで昨今、新卒者の早期離職が問題になっています。もちろん、それぞれ企業によって差はあるでしょうが、おおよそ「大卒者の3割が3年以内に離職する」という状況です。せっかく採用しても、すぐに辞めてしまう…。これはどうしたものか、と多くの採用担当者が頭を抱えています。

 しかし、「大卒者の3割が3年以内に離職する」というのは、本当に問題なのでしょうか?むしろ、このくらいは、ごく自然な現象ではないでしょうか?私には、疑問でなりません。逆に、何で辞めないと思っているの?と。何なら、5割くらい辞めてもいいんじゃないの?と。そう考えています。では、ここからは私がそう考える理由を、つらつらと書いていくことにします。

 

① 仕事なんて、やってみないと分からない

 まず、仕事なんて、やってみないと分からないことが多いです。それが、大学を卒業して間もない新卒者であれば、なおさらです。おそらく、右も左も分からないと思います。同業者の中途採用ならともかく、いきなりポーンと「このくらい分かるだろう」はないです。その仕事、分かりません。全然、分かりません…。それでまぁ、実際にいろいろやってみるのですが、(仕事が)思っていたものと違った、ということは山ほどあります。当然、そういうギャップとか、ショックとか、失望とか、が離職につながることもあるでしょう。

 さらに、人それぞれ適性が違いますから、「やっぱ、この仕事合わないわ~」という人も出てくるはずです。もちろん、配置転換などで対応できるケースもありますがね。とはいえ、なかには、会社員そのものに適性がない人もいますし。最近は、発達障害が発覚する人もいますし…。そんな簡単な問題ではありません。

 さらにもう1つ、大きな問題として人間関係があります。これは、仕事の内容よりもっと不確実な要素です。しかし、仕事の内容と同等程度に、重要な要素でもあります。これはもう、皆さん同意でしょう。実際、人間関係から離職に至るケースは数多ありますし…。ところが、困ったことに、これがほとんど「運しだい」なのです!個人の努力で、どうにかなる問題ではないのです。例えば、あらかじめ、パワハラ上司を回避する方法がありますか?ないでしょう。これで、人間関係が残念なことになると、退職・休職待ったなしです。

 

② 人それぞれ、思い描くライフプランがある

 人生いろいろ。人それぞれ、思い描くライフプランがあります。それが、「1つの会社に定年まで勤め続ける」プランであるとは限りませんし、「仕事一筋でどんどん昇進する」プランであるとも限りません。むしろ、そんな人は少数です。

 実際、「会社での仕事より、もっと重要なことがある」という人は、山ほどいます。例えば、仕事はほどほどに、子育てに励みたい人もいるでしょう。自分の趣味に、全力で打ち込みたい人もいるでしょう。自ら、サイドビジネスを立ち上げたい人もいるでしょう…。人それぞれ、やりたいことは違うのです。それで、会社の仕事がジャマになったら、そろそろ辞めようかな~、という人もいる訳です。

 さらに、キャリアアップとしての転職や、独立・開業を目指している人もいます。端から、今いる会社にこだわりはない、今いる会社は踏み台に過ぎない、そう考えている人もいます。こういう場合、よほどいい条件でないと、あえて留まる理由はありません。まぁ、いいじゃないですか。意欲的な若者で。向上心があって…。そもそも、前途有望な若者を、1つの会社(という枠)に収めること自体に無理があります。

 

③ 今のブラック労働環境では…

 だいたい、今の日本の労働環境ってクソじゃないですか?これで、まともに生きていくことができますか?よく考えてくださいよ。

 まず、単純な問題として、労働時間が長すぎです。一体、月に何時間残業していますか?という話です。その上、有給が消化できないとか、意味が分かりません。そして、その割に給料が低くないですか?時給換算したら、バイトと大して変わんねーよ、とか。ヒドすぎです。

 次に、組織の機能がクソすぎです。無駄にタテ社会で風通しが悪すぎ、意思決定が遅すぎ。意味のない会議で時間を消耗するだけ。だから、生産性が上がらず、給料も上がらないのです。そして、謎のローカルルールで縛りすぎ…。「エクセルを電卓で検算する」とか「私用での有給取得は不可」とか、バカじゃないの?その上、パワハラやら、しごきやら、いじめやらが横行…。ひどい、ひどすぎる…。

 こんな労働環境では、心身を壊すのも当たり前ではないでしょうか?ていうか、実際に壊している人、たくさんいますね。もうね、皆さん。よく耐えていますね、と。正直、離職率3割でも少ないくらいでは…?そんな風に思ってしまいます。あっ、実際に3割を超えている職場もありますね。人間、さすがに正直ですから…。

 

④ まだ、守るべきものがないから

 よく、仕事を辞められない理由の1つとして、守るべきものがある、というのがあります。ここでいう"守るべきもの”とは、家族とか、持ち家とか、クルマとか、そういうものです。これらを何としてでも守りたい、だから安定した収入源は捨てられない、そういう人が多くいます。しかし、大学を卒業したばかりの新入社員に、そんなものがあるでしょうか?多くの場合は、ないはずです。己の身1つ、ほかには何もありません、という人が多いはずです。だから、はるかに身軽なのです。はるかに辞めやすいのです。間違えても、40代の管理職と同等にみてはいけません。

 

⑤ 若い方が、方向転換しやすいから

 一般に、日本の雇用制度や労働市場は年齢にうるさいです。若ければ若いほどいい、そういう考え方が根付いています。実際、「25歳」「28歳」というように、年齢でバッサリ足きりしますし…。異業種への転職など、大きな方向転換はある程度若くないとできない訳です。そうなると、当然、方向転換できるうちに方向転換しよう…、となりますよね?だから、方向転換する訳です。当たり前です。いわゆる「第2新卒」市場だって、新しいことを始めるのは早い方がいい、そういう考え方が根底にある訳ですからね。やっぱり当たり前です。

 

⑥ 今後は、労働市場の流動性を高めるべきでは?

 そもそも、日本の労働市場が閉鎖的すぎるのではないでしょうか?これが、終身雇用が生きている時代なら、まだいいと思うのですが。もう、とっくに壊れていますし…。ましてや、新卒なんて採る方も採られる方も、ギャンブルみたいなものですから。もう、新卒なんて「辞めてなんぼ」を前提にした方がいいのではないでしょうか?それで、労働市場の流動性を高めて、トレードしやすくした方がいいと思います。2~3年スキルを積んだところで、同業や関連の職務に移籍しやすくした方がいいと思います。どっちみち、「適材適所」の実現には、人材の入れ替えが必要ですからね。それは、雇用者(企業)にとっても、被雇用者(従業員)にとっても…。

 まぁ、そのためには、首切りもしやすくしないといけませんが。う~ん…。そういう面では、セーフティーネットが大切になりますね。まずは、「生活保護は、恥ずかしいことじゃないよ」とか「(生活保護は)国民の権利だから」とか、そういう意識をちゃんと育てていった方がいいかもしれません。

 

まぁ、いろいろ書いてきました。皆さんは、どう思いますか?

 

(参考文献)