ひきこもり科学館

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【学校】本気でいじめ対策するなら、クラス制を廃止せよ!

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近年、学校での「いじめ」問題が非常に注目されています。まぁ、「いじめ」なんて昔からあったでしょうし、何を今さら…という感じもするのですが。世間がようやく事の重大性に気付いてきた、ということでなんでしょう。

確かに、大津市の某中学校で起こった痛ましい事件などをみると…。さすがに、放ってはおけない問題だと思いますよね。何が「自殺の練習」ですか。気付けば、本番になってしまったじゃないですか。そんなこんなで…。近年は「いじめ」対策についても、活発に議論されるようになってきました。

とはいえ…。いま行われている議論の多くは、何かピントが外れているような気がして、ですね。何か、もにょっとするんですよね。もちろん人権教育とか、カウンセリングとか、全くもって無駄とは言いませんよ。ただ、もっと重要なテーマがあるんじゃないの?って。そこ、触れなくていいの?って…。

そう、いま行われている議論の多くには、未だに重要なことが抜け落ちています。本気で「いじめ」対策に取り組むならば、避けては通れないテーマが抜け落ちています。それは何でしょうか?――答えはズバリ、クラス制です。実は「いじめ」とクラス制は、切っても切れない関係にあるのです。
 

1. クラス制が「いじめ」を生み出す素地をつくっている

ここでまず、皆さんに考えてほしいのが、クラス制が「いじめ」を生み出す素地をつくっている、ということです。皆さんは「いじめ」には起こりやすい環境的条件がある、ということをご存知でしょうか?――それは、① 濃密な人間関係と ② 閉鎖的な空間 、③長期継続 の3点です。この3点について、順にみていきましょう。

① 濃密な人間関係

濃密な人間関係があると、友達をつくりやすくなります。また、物事を他の人と協力してやりやすくなります。

しかしその一方で、他人のちょっとしたこと(粗)が、気になるようにもなります。他人のちょっとした癖、ちょっとした一言、ちょっとしたミス…。よく考えると別に大したことないことでも、なーんか気になってしまいます。例えば、前の人の貧乏ゆすり。一度気になったら、気になって気になって仕方がないですよね。その日限りならまだしも、毎日毎日繰り返されたら、たまったもんじゃないですよね。そりゃあ、イライラが溜まってくる。いつしか手を出したくなっても、嫌がらせをしたくなっても、仕方がない面もあります。

また、多くの人が集まってくると、当然ながらそりに合わない人も出てきます。皆さんにもいますよね?何となく苦手、何となく合わないという方が。これ自体は仕方がないことなんですが、実際問題「何かムカつく」「何か腹立つ」といった感情が発生しがちです。そして、顔を突き合わせるうちにイライラが溜まっていき、いつしか「いじめ」にも発展してしまう。そういった事態が発生しやすいのです。

② 閉鎖的な空間

先ほどは、濃密な人間関係下では他人のちょっとしたこと(粗)が気になってしまう、ということを述べましたね。また、大人数の集団内ではそりに合わない人が出てくる、ということも述べましたね。とはいえ、そういう部分が気になるのであれば「見なきゃいいじゃないか」、そういう声もあるかと思います。確かにその通りです。

しかーし!閉鎖的な空間ではそうもいかないのです。閉鎖的な空間では、いつも同じ人たちと顔を突き合わせることになります。それは、嫌いな人であっても関係ありません。そりが合わない、粗が見える、関係ありません。閉鎖的な空間では、たとえ見たくなくても、常に嫌いな人の「何かムカつく」「何か腹立つ」姿が見えてしまいます。目をそらしても、すぐに視界に入ってしまいます。そうなるともう、耐えようがないですよね?時間の問題、いつ「いじめ」に発展してもおかしくない訳です。そして、さらに困ったことに…。閉鎖的な空間では、いじめられた子どもは他の場所に逃げることさえできません。そのため、嵐が過ぎるのを待つように、ひたすら耐え忍ぶしかないのです。

③ 長期継続

たとえ濃密な人間関係でも、閉鎖的な空間でも、それが短期間であれば比較的耐えやすいです。例えば、1週間の合宿研修があるとして。その程度なら、イヤな奴がいても何とかやり過ごせる…、そう思われる方も多いのではないでしょうか?しかし、これが1か月、半年、1年…と延びていくと、どうなるでしょうか?――おそらく、キツいと思われる方が大半かと思います。ストレスが溜まっていく一方で、出ていかない…。そういう環境では、「いじめ」という捌け口をつくらないと、集団を維持できないなんてこともあります。

◯ これを、クラス制に当てはめると…

このように、① 濃密な人間関係、② 閉鎖的な空間、③長期継続 という3条件が揃う環境では、「いじめ」が起こりやすくなります。そして、何とこの3条件が、クラス制のもとでは見事に揃ってしまうのです!

まずは① から見ますと、学校では30~40人程度の集団が1つのクラス、教室に詰め込まれることになります。これは見事に濃密な人間関係といえます。次に② を見ますと、学校で多くの時間過ごすのは、1つの「教室」というごく狭い限られた空間です。これも見事に閉鎖的な空間といえます。最後に③ を見ますと、学校では年に1回程度のクラス替えが行われるまで、クラスの構成員が全く変わらないことになります。これも見事に長期継続といえます。

そんな訳で…。クラス制のもとでは、「いじめ」が起こりやすくなる環境的条件が見事に揃っているのです。つまり、クラス制こそが「いじめ」を生み出す素地をつくっているのです。まずはこの事実を、頭に入れていただきたいと思います。

 

2. 「いじめ」を減らすには、クラス制を廃止・縮小すべきだ!

先ほどは、クラス制が「いじめ」を生み出す素地をつくっている、ということを述べてきました。では、実際に学校での「いじめ」を減らすには、一体どうすればいいのでしょうか?――簡単ですね。クラス制に手を付けろ、ということです。要するに、クラス制を廃止・縮小すべきだということです。

少し、見方を変えてみましょう。同じ学校でも、小中学校・高校に比べて、大学ではあまり「いじめ」を聞きませんね。これって、何でなんでしょうね?――それはズバリ、クラス制がないからです。クラス制がないために、先ほど述べた ① 濃密な人間関係、② 閉鎖的な空間、③長期継続 といった条件が揃わないからです。大学ではあまり、人間関係が無駄に濃くなったり、長く固まったりはしません。

となると…。やはり、クラス制の有無は「いじめ」の件数に大きく影響するんじゃないの?ということでして。だったら、小中学校や高校でもクラス制を廃止・縮小すれば、「いじめ」を大きく減少させることができるんじゃないの?ということでして(逆に、クラス制に手を付けない限り、「いじめ」は減らないんじゃないかなー?)。

では、今後とるべき方針はどうなるの?といいますと。クラス制を廃止・縮小して、集団の流動性(人間関係の変わりやすさ)を高めていけばいい、ということです。具体的には、授業を選択制にする、個別カリキュラムを導入する、などの取り組みが求められます。そのあたり、詳しくお話を進めましょう。

 

3. クラス制廃止・縮小の方策を考える

先ほどは、学校での「いじめ」を減らすためには、クラス制を廃止・縮小すべきだ!ということを述べてきました。ところが、クラス制にすっかり馴染みきった私たちは、クラス制じゃない学校って、一体何なんだろう…?などと思ってしまいます。想像が付かないんですよね。クラス制の廃止・縮小なんていっても、具体的に何をどうすればいいのか、イメージが湧かない。でも、それじゃ困る。子どもたちが救われない。

という訳で。ここからは、学校での「いじめ」を減らすためのクラス制廃止・縮小の方向性として、具体的にどのような方策があり得るのか、しばし考えてみます。そして、いくつかの方策を提示していきます。

① 授業を選択制にする

学校で「いじめ」が起こりやすいのは、同じ生徒たちが同じ教室にずっといるからです。ずっと、ずーっといるからです。とはいえ、そうであれば対処はカンタン、生徒たちを程よくバラバラにすればいいのです。そこで必要となるのが、授業の選択制です。例えば、同じ数学でも「A先生の数学」と「B先生の数学」というように授業を分け、生徒にどちらかを選ばせます。そして、選んだ授業に応じて生徒に教室を移動させるのです。そうすれば、<同じ生徒たちが同じ教室にずっといる>状況をある程度避けることができ、「いじめ」の発生も抑えることができるのです。

さらに、授業だけではなく学校自体も選択制にする、というのも1案です例えば、

・◯◯学区の生徒は、A校・B校から入学する学校を選んでください。
・△△学区の生徒は、C校・D校から入学する学校を選んでください。

というように、通う学校自体に選択肢を持たせるのです。できれば、学年ごとや学期ごとに、学校を移籍できるようにするといいでしょう。そうすれば、適当なタイミングで、いじめっ子から物理的に離れることができるようになります。

② 個別カリキュラムを導入する

これは、先述の「① 授業を選択制にする」とも大いに関連する事柄です。そもそも、なぜ<同じ生徒たちが同じ教室にずっといる>状況が生まれるかというと、生徒全員のカリキュラムが同じだからです。同一だからです。逆に、人それぞれカリキュラムが違えば、このような状況は生まれません。したがって、学校も個別カリキュラムを導入すればいいのです。イメージとしては、大学や個別指導型の学習塾での時間割の組み方に近いものがあります。各生徒の興味関心や習熟度に応じて、どの時間にどの授業を受けるか、選択できるようにするのです。つまり、各生徒がそれぞれの時間割を組むようにする、ということです。そうすれば、<同じ生徒たちが同じ教室にずっといる>状況にはなりませんので。

③ 教室の壁を取り払う

これは、クラス制の廃止・縮小とは直接は関係ありません。しかし、大切な視点だと思います。先ほども述べましたが、「いじめ」は閉鎖的な空間で起きやすくなります。つまり、壁に囲まれた狭い教室ほど「いじめ」が起きやすいのです。では、そうであるなら、対処法として壁を取り払って広い教室にすればいいのです。さすがに、全ての壁を取っ払うことはできませんが。教室と廊下の間の壁1面くらいは、取っ払えなくもないでしょう。実際に、近年は「オープンスペース」「オープンルーム」と呼ばれる、壁の少ない造りの学校が増えています(下図参照)。

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図 学校におけるオープンスペースの事例

 

このような造りであれば、壁がない分、人の目が行き届きやすくなるため、「いじめ」がしにくくなります。また、万一「いじめ」に遭っても、他の場所に逃げやすくなります。今後、学校を新築・改装する際は、「いじめ」が起きにくい空間を設計することが求められそうです。

④ 遠隔(オンライン・通信)授業をする

何も、勉強は学校の教室でないとできない訳ではありません。家でも塾でも、どこでもできます。例えば、民間ではユーキャンの通信教育とか、東進のビデオ講座とか、DMMのオンライン英会話とか、いろいろありますよね。いろいろある。にもかかわらず、何で学校は教室での授業″だけ″にこだわるの?という話でして。それこそ今はネット回線さえあれば、どこでも授業ができるのですから。もっと遠隔(オンライン・通信)授業を取り入れても、いいのではないでしょうか?

何も、凝ったことをする必要はありません。いつもの授業をカメラで撮って、web上にアップするだけでもいいと思います。それだけでも、いじめだろうが病気だろうが、(教室授業の)欠席者のフォローになりますし。遠隔授業を充実させて、あまり学校に通わなくても学習できる体制をつくるのも、1つの手だと思います。そもそも学校に通わなければ、いじめられることなんてありませんからね。それと…。いい授業を撮ってアーカイブに保存しておけば、来年以降先生だってラクになるかもしれませんよ?今日は(昔撮った)ビデオを流しまーす!って。

⑤ クラス替えを増やす

ここまで私は、学校での「いじめ」を減らすために、クラス制を廃止・縮小すべきだ!としつこく述べてきました。しかし、そうはいっても、これは日本の学校教育制度の根幹に関わる問題であるため、当然「すぐにはできない!」という声も上がることでしょう。確かに、それはごもっとも…、です。そこで、ここからはクラス制を維持しながらも、「いじめ」に立ち向かう方法を1つ示してみせます。それは、クラス替えを増やすことです。そもそも、学校で「いじめ」が深刻化しやすい大きな理由として、年1回程度のクラス替えが行われるまで、集団の構成員が全く変わることがない、という環境的条件があります。これでは万一「いじめ」に遭っても、次の年度になるまで他の場所に逃れることができません。

そこで出てくるのが、クラス替えを増やせばいいじゃないか、という発想です。1年ごとではなく、半年ごと、学期ごとなどクラス替えの頻度を増やすのです。ちょっと席替えに近い頻度で、クラス替えをやってしまう訳ですね。そうすれば、いじめっ子からは早く逃れることができるでしょう。逃れることができるはずです。とはいえ、クラスを「替わりたい」生徒もいれば、当然「替わりたくない」生徒もいるでしょう(仲よくなったお友達とも、離れちゃいますからね)。そういうことも、ある程度は配慮しなければなりません。そこで、例えば「生徒の半数のみクラス替えを実施する」というように、クラス替えの規模を限定する方法をとることも考えられます。また、このような方法をとる場合、事前に希望調査(クラスの変更を望むかどうか尋ねること)を行えば、生徒の希望も反映させることができるでしょう。

 

いかがでしょうか?「いじめ」とクラス制の関係性について、お分かりいただけたでしょうか?いずれにせよ、今後「いじめ」とクラス制に関する議論が深まっていけば、これを書いた甲斐があるというものです。ではでは、今回はこのへんで。

(参考文献)